Safe Abortion Japan Project

私たちについて

私たちは、日本のAbortion(中絶・流産)をとりまく状況に問題意識を持った、産婦人科医や助産師などの専門職と、中絶・流産の経験がある当事者によるプロジェクトチームです。

Abortionとは、中絶(Induced Abortion)・流産(Spontaneous Abortion)の総称です。日本では、中絶・流産に対して掻爬(そうは)法が行われることがありますが、これは世界のスタンダードではありません。世界的なSafe Abortionの手法は薬剤か真空吸引法によるものです。しかし日本では、この薬剤は認可されていません。先進国としてきわめて異例な状況といえますが、この事実はあまり知らされていません

中絶・流産に対して基本的には同じ医学的処置が行われます。中絶の手法やケアが改善しなければ、流産の手法やケアの改善にもつながりません。それぞれの当事者の女性が抱える気持ちや背景は様々ですが、いずれも経験を語りづらく不安を抱える人は少なくありません。

Safe Abortion Japan Projectは、思いがけない妊娠や流産をした人が、自分の体のことを自分で選んで決められるように、適切な情報を伝えます。そして、多くの人と問題意識を共有することで、日本でも、女性の健康と権利を守る安全な選択肢が広がることを目指します。

SAJP(Safe Abortion Japan Project)
代表 産婦人科医 遠見 才希子

私たちのミッション

①性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブヘルス&ライツ)を尊重します。

すべての人には、性に関する適切な情報とサービスを受ける権利があります。子どもを産むならいつ産むのか、何人産むのか、自分の体のことを自分で決める権利があります。

②中絶・流産に関する適切な情報を伝えます。

思いがけない妊娠や流産をした人が、自分の体のことを自分で決められるように、わかりやすい適切な情報の発信を心がけます。そして、多くの人と問題意識を共有します。

③日本でSafe Abortionという安全な選択肢を広げます。

WHOが推奨するSafe Abortionという選択肢が、女性の健康と権利を守るために、日本でも認可され、安全・安価に普及することを目指します。

Safe Abortion(安全な中絶・流産)とは

WHOが刊行した「Safe Abortion(2012年)」には、「掻爬(そうは)法は、時代遅れの外科的中絶方法であり、真空吸引法または薬剤による中絶方法に切り替えるべき」と明記されています。

WHOが推奨する安全な中絶・流産の手法は、以下の2つです。

①薬剤(MA: Medical Abortion) 日本未承認

ミフェプリストン(おもに黄体ホルモン抑制作用がある薬)とミソプロストール(おもに子宮収縮作用がある薬)という2種類の内服薬を併用することが推奨されています。(ミソプロストールは舌下投与、経腟投与することもあります。また、ミソプロストール単独のプロトコールもあります。)

これらの薬はWHOの必須医薬品(人口の大部分におけるヘルスケア上のニーズを満たすものであり、個人やコミュニティが入手できる価格であるべき薬)に指定されています。

ミフェプリストンは1988年にフランスで開発され、フランス、中国から使用が始まり、世界中に広がりました。2000年頃より急速に普及し、世界60か国以上で認可されています。

日本では、ミフェプリストンは認可されていません。ミソプロストールは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療薬として認可されていますが、中絶・流産の適応は認められておらず、妊婦への使用は禁忌であり、適応外使用をしないよう注意喚起されています。

②手動真空吸引法(MVA: Manual Vacuum Aspiration) 2015年 日本承認

MVAは1961年よりアメリカで開発が始まり、1980年代より世界各国で普及し、100ヵ国以上で使用されています。

WHOは中絶処置での全身麻酔(静脈麻酔)をしないことを推奨しており、局所麻酔が行われます。妊娠12週未満は、基本的に術前処置は不要です。子宮内に鋭的な器械を挿入する掻爬法よりも子宮内膜損傷や子宮穿孔などの合併症のリスクや痛みが少なく、電動吸引法よりも子宮に愛護的であり静かに処置ができ、簡便であることなどがMVAのメリットとしてあげられます。

日本では、2015年にMVAが認可されましたが、海外で使用されているマルチユース製品はなくシングルユース(ディスポ)製品のみで、1キット約2万円と高額です。(2018年より流産手術については、MVAの場合、診療報酬点数が2000点から4000点に引き上げられました。)

Q.日本は、Safe Abortionなの?

A.日本で2012年に行われた調査では、12週までの人工妊娠中絶手術の方法は、約33%が掻爬法、約47%が掻爬法と電動吸引法の併用と報告されています。2015年にMVAが認可されて以降の普及率は不明ですが、コストの問題などもあり広く普及しているとは言い難く、薬剤については認可されていません。したがって現在の日本では必ずしもWHOの推奨するSafe Abortionが行われているとは言えません。

Q.世界からみた日本の問題点は?

A. 日本におけるAbortionを取り巻く問題は多岐に渡っています。中絶費用が世界的にみて非常に高額である点もそのひとつといえます。WHOは「中絶サービスは合法な医療保健サービスとして地位を認められ、女性および医療従事者をスティグマ および差別から保護するために、公共サービス、または公的資金を受けた非営利のサービスとして医療保健システムに組み込まなければならない」と提言しています。

【参考文献】

WHO 「Safe abortion: technical and policy guidance for health systems Second edition」
https://www.who.int/reproductivehealth/publications/unsafe_abortion/9789241548434/en/

WHO 「Unsafe Abortion」
https://www.who.int/reproductivehealth/topics/unsafe_abortion/en/

WHO 「Health worker roles in providing safe abortion care and post-abortion contraception」
https://srhr.org/safeabortion/

国際産婦人科連合 「FIGO Safe Abortion Project
https://www.figo.org/figo-safe-abortion

Sekiguchi A,et al.,International Journal of Gynecology&Obstetrics 2015; 129: 54-57「Safety of induced abortions at less than 12 weeks of pregnancy in Japan」
https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1016/j.ijgo.2014.09.032

公益社団法人 日本産婦人科医会 「流産のすべて 早期人工流産について」
http://www.jaog.or.jp/note/3%EF%BC%8E%E6%97%A9%E6%9C%9F%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E6%B5%81%E7%94%A3%EF%BC%88%E4%BB%A5%E4%B8%8B%EF%BC%8C%E5%A6%8A%E5%A8%A012-%E9%80%B1%E6%9C%AA%E6%BA%80%E3%81%AE%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E5%A6%8A%E5%A8%A0/